2012.02.08

有坂塁:中学校の同級生・渡辺順也と2003年に設立したシネクラブ「キノ・イグルー」代表。
カフェ、ギャラリー、書店、雑貨屋、パン屋、美術館など、全国のさまざまな空間で世界各国の映画を上映。
食事やお菓子などのおいしいものや、音楽、展覧会などと一緒に映画を楽しむことができる、小さな移動映画館。
これまでに計100回以上のイベントを開催している。また、映画祭や雑誌でのディレクション、執筆業、公共施設でのイベント企画など、さまざまなかたちで映画の楽しさを伝えている。http://kinoiglu.cocolog-nifty.com/

20:「コッポラなのに。」

さて、質問。
昨年公開された新作映画で、あなたのベスト作品って何だったでしょう?

先日キノ・イグルーの「2011年映画ベスト10」をウェブサイトで発表しました。
僕の外国映画No.1は、フェイスブックの創設者
若き天才マーク・ザッカーバーグの物語『ソーシャル・ネットワーク』。

“クラシックと革新性”この相反する要素を、
堂々と兼ね備えた、新時代を象徴する一本。
いわゆる“伝記映画”だけど、当の本人が存命している珍しいパターン。
しかもまだ27歳だというから、驚きです。
型破りな大胆さ。至福の時間でした。

僕は年が明けて間もない1月に鑑賞したのですが、
その時点で「今年のベストムービー!」と断言!
それほどの興奮がありました。


そして2012年。
歴史は繰り返されたのです。

再び年明け間もない1月に『ソーシャル・ネットワーク』に
匹敵する衝撃作と出会いました。

その映画の名は、『テトロ 過去を殺した男』。

最近ではソフィアのパパとしてすっかりおなじみの、
フランシス・フォード・コッポラ待望の最新作!

アメリカを遠く離れ、南米ブエノスアイレスで撮影。
主演はヴィンセント・ギャロ。
モノクロのシネマスコープ。光と反射のイメージ。
流麗なカメラワーク。オスバルド・ゴリホフによる美しい旋律。
そしてひとつの謎…
映画的快感に満ちあふれた、空恐ろしい傑作でした。
映画館で観られて本当に良かった!

ところが驚きの事実が発覚。
じつはこの作品、日本では当初DVDリリースのみで
劇場公開する予定は無かったのだそうです!
これにはビックリ。

「コッポラなのに…」

だってあの時代を超えた名作『ゴッドファーザー』や、
伝説の戦争映画『地獄の黙示録』を作った名匠コッポラですよ。
彼の最新作があやうく未公開になってしまうだなんて、
そんな日本、僕はいやだ。

「時代の移り変わりだからしょうがない」という意見もありますが、
だからってすんなり受け入れてはいけないこともあると思います。
そんなこと言ってたら、そのうち映画館なんて無くなっちゃいますから!

いつの時代も「本質」って変わらないと思います。
映画は、多様な世界の窓であり、
映画は、マイノリティへのあたたかな眼差しであり、
映画は、予定調和ではなく、サプライズを与えてくれます。
そして、映画館の暗闇は、夢を与えてくれる場所であると同時に、
孤独な人々の心のよりどころでもあるのです。

そんな映画の力をまっすぐに信じ、
私財を投げうってまで作品を作り続けるフランシス・フォード・コッポラ。

きっと今回の件は、何かを暗示しているのだと思います。
先人たちが、120年かけてつないでくれた大切な文化を、
どう発展させていけるのか。実際にいま楽しめているのか。
この財産を次世代にしっかり継承していけるよう、考えたいと思います。

でも幸い、今回の『テトロ』に限っては、
六本木の一館のみでだったけれど、無事に上映されたわけですから、
そこはポジティブに捉えて前へ進んでいこうと思います!
そのためにもこの現状を、みなさんにお伝えすることが
どうしても必要だと感じ、ここに書き記しました。

「コッポラなのに…」が少しでも無くなることを願って。


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