2009.06.19

読んで、聴いて、くぅっとなる

手作りの雑貨的なリトルプレスから商業出版まで、カフェや雑貨、デザイン、暮らしまわりの本や雑誌の、編集と執筆を中心に活動。近刊として、旅のささやかで美しい瞬間を写真と文章で切り取った小さな本『Beautiful Moments』を自身の出版レーベルBOOKLUCK PUBLISHING roomよりリリース。 www.bookluck.jp


39:雨を心待ちにする。

ふだん、テロテロドレスなんかにゃ一瞥もくれず、
洗濯機でジャブジャブと思いっきり洗えるような
コットン〜リネン〜!なスタイルを標榜する
ナチュラル女子が結婚する時、
突如、ソレとコレとはベツバラヨとでも言いたげに
「やっぱり婚約指輪はダイヤじゃなくちゃネ」
なんて目をギラつかせながら口走っていた時、
(なぜか少し、裏切られたような気持ちとともに)
やっぱりなんだかんだ言っても
女子は光りモノが好きなんだなーと思ったのを覚えている。

かくいう僕も、光りモノがけっこう好き。
といっても、宝石のことではなく、
この世の中が光っているほう!
高層ビルから見る夜景はもちろんのこと、
ディズニーランドのエレクトリカルパレードもラブ。
これを見たいがためだけに、
わざわざ夜間チケットを買って(しかもひとりで)入り
グスリ涙したことがあるほどである(暗い?)。

さらに、たとえば雨が降って、
濡れた道に反射して滲み流れるネオンを
切ない音楽でも聴きながら、ボーッと眺めるのも至福。
ゆえにこの季節も、まんざら嫌いではなかったりする。

雨がもたらすキラキラは、
華やかさというよりも、
そこに僕の大好きな、切なさを感じてしまうから。

ということで今の時期、僕のiPodシャッフルくんには
(前代のiPod nanoくんは、車に引かれてご臨終。オロロン)
いつそんな状況に出くわしてもいいように
あらかじめ、雨に似合う切ない音楽しか入っていない。
その中から、今回は邦楽を紹介することにしよう。

大橋トリオ。
トリオといいつつ、本当はソロらしいのだけど、
アルバム「A BIRD」に入っている曲はどれも
ソロッとトリ肌が立つほどサイコー!
「はっぴいえんど」や「サニーデイ・サービス」など
古き良きジャパニーズフォーク的系譜でありつつ、
ところどころジャズっぽい匂いもあったり、
インディペンデント系の海外アーティストの風情もあったり、
と、とらえどころはないけれど、
僕の心はがっちり、とらえられちゃった。

なのでもちろん、
今流行の(?)サビにいくにつれ髪の毛を振り乱し、
取り憑かれたように声を張り上げる抑揚系ではなく、
リズムは淡々としていて、ほんのりあたたかでスモーキー、
声はコーヒーババロアよろしく、穏やかでほろ苦くてスムース、
そして、キラキラと輝く雨のしずくを思わせる
リリカルな輝きにみちみちている。


これだけたくさんの人に愛されているのに、
いつも、自分だけが聴いていると錯覚してしまう音楽がある。
僕にとって原田郁子がそうかもしれない。

すっかりおなじみのアーティストさんだと思うので、
音楽的な説明はあえて割愛させてもらい、
とても個人的なことを書くと。

「銀河」という、
忌野清志郎さんが再闘病生活に入る直前に
書き下ろしたという曲を最初に聴いたとき、
とても不思議な体験をした。
ふわっと、自分の身体が宙に浮き、
うすい膜のようなもので覆われ、
心の奥底の、とろとろとした琴線に、
指をふれられるかふれられないか、
息を吹きかけられるか吹きかけられないか、
その間を、ゆらゆらたゆたい、
さまよっている感じになった。

やるならひと思いにやっちゃって!という気持ちと、
このままそっとしておいて!という気持ちがないまぜになり、
どうしようもなく、くぅっとなったのだ。

それを雨の日、
山手線の電車の窓にオデコをひっつけながら聴くと、
さらに強力なエモーションが
くぅっと押し寄せてくることに、この間気付いた。

それから、電車に乗るたび雨が降らないかなーと
心待ちにしている次第。






読んで、聴いて、くぅっとなる(山村光春)

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