2010.02.19

読んで、聴いて、くぅっとなる

手作りの雑貨的なリトルプレスから商業出版まで、カフェや雑貨、デザイン、暮らしまわりの本や雑誌の、編集と執筆を中心に活動。近刊として、旅のささやかで美しい瞬間を写真と文章で切り取った小さな本『Beautiful Moments』を自身の出版レーベルBOOKLUCK PUBLISHING roomよりリリース。 www.bookluck.jp


47:草食系音楽をはむ。

まったくもってイカンでイカンのだが
最近とみに「ヤマムラさんって、草食系ですよねー」
なんて、ビックリすることをいわれることがある。
そもそもアレは20代男子のことを指すワケで、
その割にボクはトシを食いすぎていることを指摘すると
「じゃあ、元祖・草食系で」なんて、
さらにありがたくない称号がついたりして。
ただ、それに対してあまり気の効いた面白いこともいえず、
「意外とそんなこともないですよ。ふふ」
なんて返すのがせいいっぱい。どうしたんだオレ?って感じ。
もしかして……傷ついてる?(←そこが草食的)。

ひとりになって、あらためて考える。
やっぱりボクって、草食系男子なんだろうか。
ちなみに大阪府立大学教授で『草食系男子の恋愛学』の
著者である森岡正博氏によると、その定義は
「心が優しく、男らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、
傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと」
とある。うーん、そうのようなそうでもないような
ますます分からなくなって来た。

そんな悩めるボクにぴったりの映画を観る機会があった。
「(500)日のサマー」。
運命の恋を夢見る草食系男子トムと、
真実の愛なんて信じない女子サマーの
今的なセンスに溢れた、ズッキンドッキンなハイカララブコメだ。

ここでみなさんの期待に応えるのならば、
トムに共感して思わず泣いちまったぜ、オロロン、
みたいなことなのかもしれないが、
別にそんなこともなく、たんたんと楽しく鑑賞した。
一瞬「これ、ヒミツにしておいたほうがいい?」……なんて、
知らぬ間に築いていた“自分らしさ”の檻の中で
もがいちゃってるボクがいたけれど(←ミスチル風)。

むしろそれよりも、脚本と演出が面白くて、
そっちのほうに目と胸がボヨヨーンと(なんでやねん)
くぎ付けになってしまっていた。
とりわけ音楽との絡みは、まさに好みドンピシャリ!
観ている最中から、これサントラホシすぎーって
ずっと、くぅっとしてたくらい。

特にトムが運命の恋に落ちるシーンなんて、サイコーだ。
会社帰りのエレベーターの中。
さっそくヘッドフォンを装着し、音楽を聴いているトムに、
かねてから気になる女子だったサマーが偶然、乗り合わせ、
隣から「私も好きなバンドよ」なんてささやかれた日にゃー!
しかもそのバンドが「ザ・スミス」なんて!!!
超ハマりすぎで、思わずニヤリとしてしまった。

80〜90年代に青春時代を過ごした
卑屈な文学好きの文化系男子ならば、
きっと少なからず影響を受けているであろうザ・スミス。
もちろん、ボクもしかり。

そう、ボクは当時、
ヒットチャートに昇るようなメジャーなポップスにも、
マッチョでヘヴィーなロックンロールにもハマれず、
どこかしら違和感を覚えていた。
だけど、それをみんなにいうことができずモンモンとしていた。

今でこそ通じると思うのだが、
ホントはマイケル・ジャクソンのことを
ぜんぜん好きじゃなくて
「THIS IS IT」なんて観る気もさらさらないわっ!
みたいなことを、でも時代の空気的に、
なんとなくいえないでいる、みたいな感じに近いだろうか。
(我ながらいいたとえ)

そういう意味でザ・スミスは
まるでくよくよとひねくれた自分の価値観を
「それで、ええんやでー。オレらがおるやんけー」
と肯定してくれたような、救世主的な存在だったのだ。
だからあのエレベーターのシーンで
ただ音楽の趣味が合うっていうだけでなく
「ビビビ感」をトムが受けたのも、さもありなんことってワケ。

そう考えれば、草食系男子という言葉も、
該当する本人たちからすればはた迷惑に違いない!と
思い込んでいたけれど、存在を肯定しているという意味では
彼らもその実、まんざらでもないのかもしれない。

ちなみに、ボクはそれから自分協議の結果、
モンゴルかどこかの少数民族よろしく、ふだんは草食でも、
ここ一番の時はヒツジとかウシとかを丸焼きにしてかぶりつく
「草食ときどき肉食系男子」キャラで行く!
ということに決まった。

決まったから何?って聞かないでね、お願いだから。






読んで、聴いて、くぅっとなる(山村光春)

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